10/18 秋季東北大会準決勝
仙台育英×花巻東 @石巻市民球場
試合経過勝てばセンバツ出場が濃厚となる東北大会の準決勝、第2試合は仙台育英×花巻東という東北でもトップクラスの2チームの対戦。前日に行われた準々決勝では仙台育英が松田→小林、花巻東は中居が完投と、共に伊藤と菱川というエースを温存して勝利し、この決戦を迎えた。
ただ驚いたことに仙台育英の先発はエース伊藤でなく、今大会初登板となる1年生左腕の古川。古川は171㎝と小柄な左腕であるが、ストレートはMAX141㌔と言われており、石巻市民球場ではスピード表示はなかったものの、力のある球が来ていた。またプレートの1塁側に立って投げ込んでくることもあり、左バッターのアウトコースの球には角度も感じられた。スライダーもコントロールが抜群で、いきなり花巻東の先頭打者の宮澤(左打者)を全てアウトコースの際どいボールで3球三振に仕留めるなど、初回は最高の立ち上がりを見せる。2回・3回はともに四球なども絡んでピンチを招くものの、2回は自らの牽制で、3回は2番相野を併殺に仕留めてピンチを切る抜ける。

仙台育英の先発の1年生左腕古川
仙台育英は2回表、この回先頭の5番渡邉がレフト前ヒットで出塁して、次打者の初球に盗塁を決めて、バントで1死3塁のチャンスを作るものの、7番岡田→8番古川は連続ピッチャーゴロに倒れ無得点。3回にも1死から1番浅野が四球を選ぶと、2番島貫の打席でエンドランが決まり、さらに3番秋山は死球を受けて、1死満塁のチャンスで4番吉野を迎える。ただ吉野はファーストゴロでホーム封殺されてると、5番渡邉の打球はいい感じにライト前に飛ぶも、これをライト佐藤が前にダイビングキャッチして掴む。仙台育英は3回まで、花巻東のエース菱川の前に毎回チャンスを作りながらも無得点に終わっていた。

ファインプレーでチームのピンチを救った花巻東のライト佐藤
ただ仙台育英ら4回表には1死から、7番岡田のボテボテのピッチャーゴロが内野安打となり出塁すると、須江監督は古川のところに代打橋本を送る。橋本のサードゴロで岡田は2塁に進塁し、ここで迎えた打撃好調の9番木村の打球は二遊間抜けようかというところをショート宮澤が好捕。ただ1塁への送球はショートバウンドになってしまい、これをファースト黒澤がわずかに弾いてしまうと、この間に岡田が一気にホームインして、仙台育英が先制する。

打撃好調の仙台育英の9番木村の打球がエラーを招き先制点となった
仙台育英は古川に代打を出したために、4回裏からはエース伊藤が満を持して、この東北大会初登板。伊藤はスピードこそ、本人の最速の147㌔には遠く及ばないものの、多彩な変化球も駆使して、花巻東打線を淡々と打ち取っていくエースらしいピッチングをみせる。
一方の花巻東のエース菱川は、こちらも^_^をストレートはリリーフ登板した角館戦の147㌔には及ばなかったものの、低く右バッターのアウトローに決まる球には目を見張るものがあった。変化球もスライダーを中心に、カーブ・フォーク・チェンジアップと一通り揃っている。4回には1点を失ったものの、その後は一段と素晴らしい投球を披露。8回にはさらにギアを上げて、声を出しながらの力投で、8・9回で3個の三振を奪う(7回までは合わせて2個のみだった)。結果的に5回以降は、仙台育英に2塁も踏ませない見事なピッチングを見せ、味方の援護を待つ。

仙台育英を1得点のみに抑えた花巻東のエース菱川
伊藤の前にこちらも2塁すら踏むこともできていなかった花巻東打線だが、8回裏に2死から9番渡辺、1番宮澤とこの試合初の連打でチャンスメイク。ここで迎えた2番の主将相野に対して、佐々木監督も伝令を送るなどして鼓舞。すると相野はフルカウントから、伊藤のストレートをうまくとらえるも、ライナー性の打球はライト宇治野のグラブに収まってしまう。花巻東は9回裏にも、1死から4番佐藤がレフト前ヒットで出塁するも、最後はギアを上げた伊藤が菊地開・黒澤を共にストレートで連続三振に仕留めてゲームセット。仙台育英が1ー0で勝利して、決勝進出を決めた。

※お手数ですが、もしスコアが見づらい場合には画面を拡大してみてください
東北大会はここまで2試合は背番号10の右腕松田の好投で勝ち上がってきた仙台育英。1年夏の甲子園でも登板を果たしており名の知れたエース伊藤は完全に温存できていた状態で、勝てば事実上センバツ確定となるこの試合では満を持して先発かと思いきや、先発は1年生左腕の古川であった。ただこの起用は宮城大会決勝の東北戦でも行っており、この時も古川→伊藤で完封リレーを達成している。そもそも仙台育英は本来は継投が基本のチームであり、これまで2試合は点差がついて7回コールドとなっていたこともあり、試合のほぼ全部を松田が投げ抜いていただけのようである。
この完封劇は古川、伊藤の両投手の功績である一方、それを支えた守備力も見事であった。仙台育英の守備陣はこれで今回の東北大会で3試合連続でノーエラー。浅野・渡邉の二遊間を中心にセンターラインの守備は特に固い。また特徴的だったのが外野の守備位置で、この試合では左バッターに対して、外野はセンターが左中間を守り、レフトはレフト線ギリギリと極端な左よりに守るという、セオリーとは反対のシフトを敷いていた。ただこの試合で仙台育英が打たれたヒット5本は全て左バッターによるレフト前ヒットという結果から見ると、このシフトにも合点はいく。この試合の決勝点は花巻東のエラーによるもので、そんなシフトも含めて仙台育英の守備力の高さが、花巻東を上回った結果がこの試合のスコアともいえる。
敗れた花巻東であるが、大健闘であったといえる。今大会ではやはり仙台育英の実力が頭1つ抜けていると言われたいたが、そんな相手に対して、0-1(それも決勝点はボテボテ内野安打→エラー)ということで、まさに紙一重の戦いを繰り広げた。その立役者はなんといっても1失点完投のエース菱川であり、さらには前日の試合で完投勝利をあげて、菱川を万全の状態でこの試合に送り込んだ2番手の中居であろう。敗れはしたものの、これでセンバツ選考においては仙台育英とは僅差の力をもったチームと評価されるために、決勝で仙台育英が柴田に大差をつけて勝つことになると、ベスト4からのセンバツ出場という可能性も捨てきれない。
Pickup Player伊藤樹 仙台育英2年 投手~さすがはエースという6回0封~この試合では4回からマウンドに上がった仙台育英のエース伊藤は、最後まで無失点で投げ切りチームに勝利をもたらせた。
伊藤は系列の秀光中時代から名を馳せていた投手で、軟式ながらMax144㌔をマークして、笹倉との2枚看板でチームを牽引して、全中の決勝戦では森木(高知中)との大激戦の末に敗れたものの、準優勝を果たした。そのまま仙台育英に進学すると、1年春よりベンチ入りを果たし、1年夏の宮城大会決勝では東北相手にリリーフとして3回無失点の好投をみせて試合を締めた。甲子園でも飯山戦では2回無失点の好投も、先発した準々決勝の星稜戦では2回途中5失点KOとなってしまった。1年秋も多彩な投手陣の一角として、東北大会優勝を果たしたものの、本来の投球はできずに神宮大会ではベンチ外を経験。2年夏の甲子園交流試合の倉敷商戦では、2番手として登板して、2/3イニングを無失点に抑えていた。
いよいよ最終学年として迎えたこの秋の新チームでは、笹倉がベンチ外(一部では退部したという噂も…)という事情もあって、伊藤は背番号1を手にした。今回の東北大会では初戦、準々決勝ともに登板はなかったものの、この準決勝では1点を先制した直後の4回のマウンドに伊藤は上がった。
この試合の伊藤はストレート自体はぞれほどスピードが出ているわけではなかったが、スライダー・カーブ・SFF・チェンジアップといった多彩な変化球も駆使した投球を披露。コントロールは抜群であり、特にアウトコースのボールは生命線となっていて、その対策のために花巻東の打者がバッターボックスのベースよりギリギリに立っていても、アウトコースに投げ続けた。そのような投球で淡々と花巻東打線を打ち取っていき、4~7回はヒットを1本許したものの、それ以外はパーフェクトという内容。8回には渡辺・宮澤の連打で初めてピンチを背負ったものの、2番相野はライトフライに打ち取ってピンチを凌いだ。最終回にはギアをあげたのか、8回までの5イニングでは1個だった三振を3個も奪い、特に1死から菊池開・黒澤は威力を増したストレートで三振に斬って取りゲームセット。結局伊藤は6回を投げて被安打4、4奪三振、無失点という好リリーフをみせ、古川との完封リレーを達成した。
1年夏の甲子園では144㌔をマークときから見ると、本格派としての成長曲線には達していない気もするが、それでも打者を見て、打ち取る術を身に着けた投球は見事であった。本来はストレートはMax147㌔ということで、現在の投球術の中で、このような数値をマークすることができれば、1年後にはドラフト会議で指名される投手となっていることだろう。

エースらしく6回無失点の好リリーフをみせた仙台育英の伊藤
ランキングに参加しています
よろしければクリックをお願いします↓
にほんブログ村
テーマ : 高校野球
ジャンル : スポーツ