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作新学院×相洋【春季関東大会】

5/20 春季関東大会2回戦
作新学院×相洋 @サーティーフォー保土ヶ谷球場

試合経過

神奈川大会では、横浜と東海大相模の神奈川2強を破るというミラクルで関東大会にコマを進めた相洋。対するはセンバツ8強で、春季栃木大会も制した、関東大会常連の作新学院です。

作新学院は初回、先頭の高森が死球で出塁すると、バントしない作新学院らしく2番東海林はライト前ヒットを放ち1・3塁。四球などで1死満塁となってから、5番廣田の打球をショートが後逸してしまい、作新学院が2点を先制する。作新学院は3回表にも2死から廣田が四球で出塁すると、6番齋藤のライト線の大飛球は、1度はライトのグラブに収まるも落球し(記録は2ベース)、廣田がホームイン。5回表には東海林のヒットからチャンスを作ると、4番磯がライトオーバーのタイムリー2ベースを放ち追加点をあげる。
20230520作新学院 磯
タイムリー2ベースを放った作新学院の4番磯

一方の相洋は、4回に5番小西が初回のエラーの汚名返上とばかりにレフトスタンドにソロホームランを放つも、得点はこの1点のみ。試合は作新学院が完全にペースを握り、4ー1とリードして前半戦を終える。
20230520相洋 小西
追撃の1発を放った小西

この流れを変えたのが、6回から相洋の2番手としてマウンドに上がった左腕の中島であった。中島はストレートはMAX131㌔だが、フォームに躍動感があり、キレのあるスライダーとのコンビネーションで作新打線を次々と打ち取っていき、なんと6〜9回までパーフェクトピッチングをみせる。
20230520相洋 中島
4回パーフェクトピッチングをみせた中島

ただ相洋打線は相変わらず、作新学院のエース市川の前に沈黙。この春から作新学院の背番号1を背負う市川は、ストレートは120㌔台ながら、スライダーも含めてコントロールが非常によく、安定したピッチングを披露。相洋打線を8回まで散発の7安打1失点に抑え、完投勝利をかけて最終回のマウンドにも上がった。
20230520作新学院 市川
この春から作新学院のエースナンバーを背負う市川

しかし相洋は9回裏、これまでの沈黙が嘘のように高麗→土屋→中島と7番から下位打線の3連打で得点(8回までは1度も連打がなかった)。作新学院はここで市川→センバツまで背番号1を背負っていた左腕の川又、キャッチャーも主将の草野とバッテリーをスイッチ。しかし川又はバントを挟んで、連続四死球を与えてしまい、1点差でなおも満塁。ここで迎えた相洋の4番川島はサードゴロで、作新は5→4→3と併殺でゲームセットを狙ったものの、1塁はセーフで同点。相洋はなおもサヨナラのチャンスであったが、ここは作新学院3番手のサイドハンド石毛が凌いで、試合は延長戦へ突入する。

10回からは無死1・2塁スタートのタイブレーク。相洋は中島に代走を出してしまった関係から、マウンドには3番手として大場が上がる。大場に対してバントをしない作新学院打線は強硬策で臨むも、サードゴロ→三振→サードゴロで無得点。その裏の相洋は、代打鳴海を出してバントで送るも、続く高麗の打球はサード武藤の好守に阻まれ、ホームタッチアウト。石毛が土屋をピッチャーゴロに打ち取り、両チーム無得点で試合は11回に突入する。

11回表の作新学院は4番磯からであったが、大場のチェンジアップの前に各打者のバットが見事に空を切っていき、なんと3者三振で無得点。裏の相洋はピッチングで勢いに乗った大場からの攻撃で、バントをせずに打たせたものの、結果は最悪のピッチャーゴロ併殺。ただ2死3塁で続く1番永野は、初球を叩くと打球は三遊間へ…ショート磯が好捕も1塁はセーフで、これがサヨナラタイムリー内野安打となり相洋が5ー4で勝利した。
20230520相洋 永野
サヨナラヒットを放った永野


20230520作新学院×相洋
※お手数ですが、もしスコアが見づらい場合には画面を拡大してみてください


神奈川大会でも横浜・東海大相模を破るというミラクルを見せた相洋が、関東大会の舞台でも9回に3点差を追いつき、延長戦でサヨナラ勝ちを納収めた。8回まで沈黙していた打線が、いきなり9回に打ち出したのは本当にミラクルに近い一方、投手陣に関しては実力で、強力の作新打線を抑えており、ミラクルではない。相洋の投手陣は、大谷・中島・大場という2年生の3本柱。先発の大場は140㌔に迫るストレートで、5回までに4失点はしたものの、うち3点は守備のミスによるものであった。そして左腕の中島は4回パーフェクト、大場もタイブレークで2回無失点4奪三振と、作新打線を完璧に抑えてみせた。この3人が来年も残ることを考えると、来年は横浜や東海大相模を破ってもミラクルと言われないチームになるかもしれない。
20230520相洋 大谷
先発した相洋のエースナンバーを背負う大谷

作新学院は試合の後半は流れを完全に相洋に奪われ、いいところなく敗れてしまった。この試合では打線も6回以降ノーヒットと結果を残せなかったが、やはり不安なのは投手陣だ。この春からエースナンバーを背負った市川は、8回までは1失点と好投を見せたものの、9回には捕まってしまった。課題である投手陣において、新戦力の発掘がテーマであったこの春の作新学院。エースとして栃木大会を制した市川や、この試合で好リリーフをみせた石毛らの活躍は好材料ではあった。ただこの試合で登板した3投手はいずれもストレートが130㌔に満たず、もちろんスピードが全てではないが、全国レベルで戦う投手陣のレベルにはまだ達してないと思う。夏に向けては、やはりセンバツでもコンディション不良からかこの春もベンチ外となっている147㌔右腕の小川の復調、磯や高森といった野手陣の登板も含めて考える必要がありそうだ。
20230520作新学院 石毛
タイブレーク含め好投を見せた石毛


Pickup Player
大場智仁 相洋2年 投手
~必殺チェンジアップでタイブレークを2回連続無失点~
相洋は10回のタイブレークから登板した大場が、2イニング連続で無失点に抑え、チームを勝利に導いた。

大場は相洋では1年秋より、大谷・中島とともに3本柱として活躍。桐蔭学園戦ではリリーフで3回無失点、日大藤沢戦では先発で6回無失点と好投をみせている。3年春は横浜戦で先発して3回無失点の好投、東海大相模戦では9回途中からリリーフして試合を締めるなど2強撃破にも貢献。決勝の慶応義塾戦では先発して打ち込まれてしまったものの、この関東大会出場には大きく貢献した。

この試合はエースナンバーを背負う大谷が先発で、その後を受け継いだ左腕の中島が4回パーフェクトで繋ぎ、あとがない9回裏に中島に代走を出した関係もあり、大場が10回、いきなり無死1・2塁でスタートするタイブレークという場面でマウンドに上がった。大場はストレートはこの試合Max134㌔をマークしたが、なんといっても魅力はスライダー・カーブ・チェンジアップといった変化球。1番高森は全球変化球でサードゴロに打ち取ると、続く東海林はチェンジアップで空振り三振、3番武藤もスライダーでサードゴロに打ち取りタイブレークを無失点で切り抜けた。

しかしその裏の味方の攻撃も0点でタイブレーク2イニング目に突入すると、4番磯をストレート→チェンジアップで追い込むと、最後は高めの釣り球で3球三振。続く落合も変化球で追い込むと最後はストレートで見逃し三振。最後は代打猪瀬を低めのチェンジアップで空振り三振と、3者三振という圧巻の投球をみせた。ここで光ったのはチェンジアップであり、ストレートと腕の振りが同じなのか、作新学院打線はとにかくタイミングがあっておらず、またボールの落差も大きいので、このチェンジアップにことごとくバットが空を切った。このチェンジアップを意識ているので、ストレートは130㌔前後ながらも、こちらにも対応できないという、完全に大場の術中にはまっていた。結局無死1・2塁スタートのタイブレークを、打者6人パーフェクト4奪三振という圧巻の投球で2イニング連続無失点でしのぎ、その裏のチームのサヨナラ勝ちを呼び込んだ。

チェンジアップに関しては、高校球界でもトップクラスのボールかもしれない。まだ2年生なので、あとはストレートの球威が増してくれば、神奈川を代表する投手となることだろう。
20230520相洋 大場


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神戸弘陵×滝川第二【春季兵庫大会】

5/3 春季兵庫大会準々決勝
神戸弘陵×滝川第二 @明石トーカロ球場

試合経過

春季兵庫大会の準々決勝、明石トーカロ球場で行われた第1試合は、神戸弘陵と滝川第二の対決。滝川第二はプロ注目のエース坂井は、4番ライトでスタメン出場で、先発マウンドには2年生右腕の田上が上がった。

滝川第二は1回裏、先頭の福田が三遊間を破り出塁するも、盗塁死で2死ランナー無し。それでも3番戎が四球を選ぶと、今度は盗塁成功。この回に限らず、この試合では滝川第二の積極的に仕掛けていた。2死2塁となって迎えた4番坂井は、フルカウントからの低めのボールを、まるでゴルフのようにうまくすくいあげると、打球は左中間の後方に落ちるタイムリー2ベースとなり、滝川第二が先制する。
20230503滝川第二 坂井2
難しいボールを打って先制タイムリーとした坂井

滝川第二は2回にも連続四球でチャンスをつくったところで、神戸弘陵は先発のサイドスロー波多野→エース八杉に交代。八杉は基本は上から(といってもスリークウォーター気味だが)だが、サイドスローも混ぜて投げる。ランナーを出しながらも、ピンチの場面で4番坂井から2つの三振を奪うなど粘りの投球で、滝川第二打線に追加点を許さなかった。
20230503滝川第二 八杉
腕の位置を変えるなど変幻自在な投球をみせた八杉

滝川第二の先発の田上は、公式戦初先発らしいが、そうとは思わせないような見事な投球。フォームがしっかりしていて、コントロールも非常によく、スライダーやフォークといった変化球もいい。7回まで神戸弘陵打線を、3安打7奪三振無失点と完璧に抑えてみせる。
20230503滝川第二 田上
7回無失点の好投をみせた田上

滝川第二は7回裏、先頭の8番堀部がヒットで出塁すると、田上の代打の一宮がバントで送りチャンスを作ると、1番福田が待望の追加点となるタイムリーヒット。さらに福田の盗塁や死球でチャンスを作り、4番坂井を迎えるも、ここはレフトからマウンドに上がった神戸弘陵の3番手村上が抑えてピンチを凌いだ。

滝川第二は8回からついに、エース坂井が今大会初となるマウンドに上がる。坂井は186㎝の長身から角度とスピードのあるボールを投げ込むも、神戸弘陵打線は先頭の6番清水がセンター前ヒットで出塁し、続く砂川の打球もポテンヒットとなり無死1・2塁。そこから坂井が踏ん張り2死とするも、1番松本雄の打球もレフトの前にポトリと落ちて、神戸弘陵が1ー2と1点差に迫る。
20230503神戸弘陵 清水
坂井の出鼻をくじくヒットを放った清水

ただ神戸弘陵は最終回にも4番古川がヒットを放つも、後続は坂井の前に抑えられてしまいゲームセット。滝川第二が2ー1で勝利し、翌日の準決勝にコマを進めた。


20230503神戸弘陵×滝川第二
※お手数ですが、もしスコアが見づらい場合には画面を拡大してみてください

この春は服部監督曰く坂井に頼らないチーム作りがテーマのようであり、坂井の登板もこの春初めて。滝川第二が夏の甲子園に出場するには、センバツ準Vの報徳学園や、神戸国際大付など全国レベルのチームを破る必要があるが、坂井というこの世代でもトップクラスの素質をもった投手がいれば、その可能性もある。あとは坂井をどれだけ勝負どころに、万全の状態で投入できるかが、それがテーマに繋がっている。先発の田上の7回無失点と十分なほどに試合を作った。むしろこの試合の内容だけでいえば、十分に試合を任せられるどころか、来年は兵庫でトップクラスの投手にもなれると感じるものであった、スコア的には1点差で、打線には物足りなさも感じたかもしれないが、滝川第二にとっては大きな収穫のあった試合だと思う。


Pickup Player
坂井陽翔 滝川第二3年 投手
~投打でみせたドラフト上位の素質~
滝川第二の坂井は、打っては先制タイムリー、投げてはクローザーとしてチームを勝利に導いた。

坂井は播磨ボーイズでは外野手であったが、滝川第二入学後に本格的に投手に挑戦すると、球速が一気に向上。1年夏から背番号20をつけて投手兼外野の控えとしてベンチ入りし、1年秋からはエースを務める。2年秋には148㌔をマークするまでに成長し、関西学院戦では5回無失点、神戸学院大付戦では5回1失点の好投。準々決勝ではのちにセンバツ準Vを果たす報徳学園相手に7回まで無失点の好投をみせるも、8回に失点を喫して敗れた。この春は他の投手の育成というチームのテーマもあり、ここまでは登板はなかった。

この試合でも坂井は4番ライトとしてスタメンに名を連ねた。シートノックを見ていると、ライトからまだ軽く投げていそうだが、ノビのある素晴らしい送球をしていた。そして1打席目には、2死2塁のチャンスでフルカウントから低めのボールを、まるでゴルフのようにうまくすきくあげて、左中間の後方に落ちる先制のタイムリーヒットを放った。しかしその後は神戸弘陵のエース八杉の変幻自在の投球の前に2三振を喫するなど打撃ではいいところなく終わった。野手としてはまだ粗さの残るものの、こちらも打者としての素質を感じる内容であり、野手としてもドラフト候補にあげられる選手であった。

そして8回からは今大会初となるマウンドに上がった。いきなりヒットを浴びて、その後にポテンヒット2本とややツキもなく失点を喫してしまったものの、長い腕をしならせて投じるストレートはスピード・ノビともに一級品であった。またストレートだけに限らず、スライダー、フォークといった変化球もよく、特にフォークはこのスピードでしっかりと落ちられたら高校生では打てないという代物であった。2回4安打1失点という結果だけ見ればよくはないが、不運なところもあり、今大会初登板としては悪くはないと思う。

素質としては間違いなく、今年の高校生投手の中でもトップクラスだと思う。あとは夏も含めて結果を出す、具体的には報徳学園や神戸国際大付といった強豪を抑えるような投球ができれば、ドラフト1位も十分にあり得るだろう。上述の通り、田上が好投するなど坂井を万全の状態で、この2チームにぶるける準備は整ってきているのは心強い。

20230503滝川第二 坂井3

20230503滝川第二 坂井1



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早稲田大×明治大【東京六大学野球連盟】

5/14 東京六大学野球連盟 第6週2日目
早稲田大×明治大

試合経過

東京六大学はここまで全カードで勝ち点をあげている明治大。前日の早稲田大との1回戦でも大勝し、この試合に勝てば優勝が決まる。対する早稲田大も、ここから2連勝して明治大から勝ち点を奪えば優勝への望みを残すこととなり、敗られない試合だ。

早稲田大の先発は2019年に履正社を夏の甲子園優勝に導いた左腕清水。だだ明治大は清水に対して初回から襲い掛かり、1番堀内が初球をレフト前に運ぶと、2番飯森はバスターで三遊間を抜くヒット。1死1・3塁となって迎えた4番の主将でドラフト候補の上田は、ストレートをレフト線に弾き返し、堀内が生還して明治大が先制。さらに今季初のスタメン起用となった5番杉崎のレフトへのタイムリーで2人が生還して、初回に3点を奪う。

明治大の先発は、本来先発2番手の蒔田がややコンディション不良ということもあり、左腕の石原。上半身でタメを作り、長い腕から繰り出すストレートはMAX149㌔をマークしたが、それ以上にあっという間にホームに来る感覚である。130㌔前半のスライダー、120㌔後半のチェンジアップ、110㌔後半のカーブといった変化球も良く、5回まで早稲田大打線を2安打無失点に抑える。まだ実績は少ないものの、そのスケールの大きさには志望届を出せば、ドラフトでの指名はあると感じさせた。
20230514明治大 石原
明治大の先発の石原は5回まで素晴らしい投球

一方の早稲田大は3回から2番手として伊藤樹が登板。本来はクローザーを務める伊藤樹であるが、前日に15失点とリリーフ陣は軒並み打ち込まれてしまったこと、また敗ければ明治大の優勝が決まる後がない状況ということで、早めの登板となった。伊藤は長いイニングを投げることを意識してから、MAX144㌔をマークしたストレートを投げたのはごく僅かで、カットボール・スライダー・フォーク・チェンジアップといった変化球中心の投球であった。
20230514明治大 伊藤樹
3回から早くもマウンドに上がった早稲田大のリリーフエース伊藤樹

3・4回と伊藤に抑えられていた明治大打線であるが、5回に飯森・宗山の連打に、上田が四球を選び無死満塁のチャンスを作る。5番杉崎のフラフラと上がった打球は、わずかにライトが届かず落ちるも、スタートを切れなかった1塁ランナーは2塁フォースアウトとなってしまったため杉崎のライトゴロの間に1点を追加する。ただなおも1死1・3塁のピンチでは伊藤が踏ん張り、この回最少失点で切り抜ける。

グランド整備明けの6回表、早稲田大の先頭尾瀬の打球はピッチャー強襲となるも、ショート宗山がうまくカバーしたが送球がショーバンとなり1塁セーフ。2死となってから4番印出も四球を選び、2死1・3塁で迎えた5番吉納はフルカウントからの外のボールにうまく合わせると、打球は逆方向のレフトポール際に飛び込む3ランとなり、3ー4と早稲田大が1点差に迫り、試合は一気に緊迫した展開となる。
20230514明治大 吉納
3ランホームランを放つ吉納

明治大は7回表から、ケガ明けでこれが今シーズン初登板となる久野が上がる。久野はMax147㌔のストレートと、鋭く大きく曲がるスライダーを武器に2イニングを投げて、早稲田大打線をノーヒットに抑える好投をみせ、田中監督の大胆な器用に応える。すると8回裏には、明治大は杉崎がこの試合3安打目となるヒットで出塁すると、送って1死2塁となったところで、7番小島が初球を捉え、打球は打った瞬間にそれとわかるライトスタンドへの2ランホームランとなる。
20230514明治大 小島1
早稲田大を突き放す貴重な2ランを放った小島

リードを3点に広げた明治大は、最終回は蒔田が登板。簡単に2死を取り、最後の打者をサードゴロに打ち取ってゲームセットと思いきや、サード上田の送球がワンバンの暴投となるというハプニングもあったものの、蒔田は最後は代打篠原をショートゴロに打ち取りゲームセット。早稲田大から2連勝で勝ち点をあげた明治大が、春季リーグ戦の優勝を決めた。
20230514明治大 優勝
優勝を決めた明治大ナイン


20230514早稲田大×明治大
※お手数ですが、もしスコアが見づらい場合には画面を拡大してみてください


優勝した明治大の、強さの象徴であったのが、抜擢された選手が次々と結果を出す選手層の厚さと田中監督の采配であった。勝てば優勝というこの大一番でも、田中監督は5番に今シーズン初スタメンとなる杉崎を起用。杉崎は初回には2点タイムリーを放つなど、全て三遊間を破る3安打で3打点とその起用に見事なまでに応えた。2番手として登板した久野も、1年秋にはマウンドに上がるなど実力のある投手であるが、ケガ明けでこの試合が初登板。ほかにも藤江や千葉など実績のある左腕がいる中で、いきなり大事な場面での起用は…と思ったが、久野は2回無安打無失点と見事な投球で、早稲田大の流れを断ち切った。この他にも、この春季リーグ戦では、1年生の内海が代打2ラン、この春がデビューの2年生木本が決勝の逆転2ランを放つなど、選手起用が見事に的中した。この暑い戦力層で、全日本大学野球選手権も制することを期待したい。
20230514明治大 杉崎
スタメンに抜擢されて3安打3打点の活躍をみせた杉崎

優勝を逃した早稲田大は、結果として2人目の先発投手の不在が大きく響いた。早稲田大はエース加藤は大車輪の活躍をみせたものの、2戦目の先発は開幕カードこそ東大相手に鹿田が5回1失点と好投をみせたが、その後はともに4年生でセンバツ準Vの右腕飯塚、夏の甲子園優勝の左腕清水の4年生2人が務めたものの、5回までもったことがない。この試合も先発の清水は初回に3点を失い、2回を投げたところで代打を送られてしまった。秋に向けてはラストとなる飯塚・清水の復調にも期待したいが、ここまでリリーフエースを務めてきた伊藤樹の先発転向や、宮城・越井・香西・森山といった1年生の台頭にも期待したい。
20230514早稲田大 清水
この試合の早稲田大の先発を務めた清水


Pickup Player
小島大河 明治大2年 捕手
~新正捕手が優勝を決定づける貴重な2ラン~
早稲田大が1点差に追い上げて迎えた終盤で、小島にそれを突き放す2ランが出た瞬間、明治大の優勝は決まったと思った。

小島は走攻守揃った器用な選手であり、東海大相模では1年秋からセカンドのレギュラーを獲得し、2年秋は3番セカンドとして関東大会8強に輝いた。そころが3年春のセンバツでは背番号は4であるが、小島はマスクを被り、エース石田(巨人)ら投手陣を工にリード。明豊との決勝戦では、サヨナラ打を放つなどしてチームをセンバツ優勝に導いた。しかし春夏連覇を狙った夏は、神奈川大会の準々決勝でコロナの影響で出場辞退となってしまった。

明治大に進学した小島は、1年秋に代打としてリーグ戦デビュー。フレッシュリーグでは正捕手を務め、明治神宮大会でも控え捕手としてベンチ入りし、高校に続き、大学でも日本一に輝いた。正捕手であった箕尾(Honda鈴鹿)が抜けた今年は、菅原との正捕手争いを制して、リーグ戦ではこの試合含めて全10試合でスタメンマスク。打っては打率は2割ちょっとと低いものの、明治大との4回戦では延長戦で決勝3ランを放つなど勝負強さを発揮していた。

この試合でも7番捕手としてスタメン出場した小島であったが、打撃では二ゴ→二ゴ→三ゴと3打席目まではノーヒット。ただ守備面では先発石原を見事にリードし、5回まで早稲田大打線を2安打無得点に抑えていた。ただ6回には吉納に3ランを浴びて1点差に迫られてしまい、試合の雲行きも怪しくなってきた。そんな中迎えた小島の第4打席は、8回裏1死2塁という場面。小島は初球を振り抜くと、打球は打った瞬間にそれと分かる1発でライトスタンドに突き刺さり、早稲田大を突き放す貴重なホームランとなった。終盤で点差が1→3となったことで、早稲田大としては絶望感が漂い、見ている側もこれで明治大の優勝は決まったと思った。

捕手としての小島は、セカンド送球は肩力もさることながら、捕ってからが早く正確性がある。まだ経験が3年と浅いものの、2年生にして明治大の正捕手の座と掴んでいるのだから、その能力の高さもうかがえる。ただ本当にセンスあふれる選手なので、捕手に限らず、どこのポジションを任せても、ハイレベルにこなしてくれそうだ。なのでまだ将来像は分からないところはあるが、まずは全日本大学野球選手権で、正捕手としての高校に次ぐ日本一に輝きたいところだ。

20230514明治大 小島3

20230514明治大 小島2



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大学日本代表候補メンバーを勝手に選んでみる

大学野球の春季リーグも佳境に差し掛かり、優勝⇒全日本大学野球選手権出場が決まるチームも多く出てきました。全日本大学野球選手権の後に開催されるのが、大学日本代表候補合宿。全日本大学野球選手権の結果により追加での招集もありますが、主に春季リーグの活躍で決まるこのメンバーを勝手に予想してみました。

【投手】
滝田(星槎道都大)
後藤(東北福祉大)
大山(東日本国際大)
加藤(早稲田大)
村田(明治大)
尾崎(法政大)
篠木(法政大)
下村(青学大)
常廣(青学大)
草加(亜細亜大)
武内(国学院大)
西舘(中央大)
細野(東洋大)
西舘(専修大)
寺西(日体大)
古謝(桐蔭横浜大)
松本(名城大)
金丸(関西大)
谷脇(立命館大)
真野(同志社大)
上田(大商大)

今年、来年のドラフト候補が目白押しのメンバーの中でも注目したいのが細野(東洋大)。豊作といわれる今年の大学生投手の中でも、No1と言われている左腕は、今年も東洋大のエースとしてチームを2部優勝に導いた。昨年も代表に選ばれればエース格と称されていたが、直後に東都の入替戦を控えていたことから、合宿を辞退し、代表選出ならず…。今年も代表の翌週に、入替戦を控えているものの、昨年よりは期間があるために合宿は参加可能と思われるので、日本代表のエースとして期待したい。
20220622東洋大 細野
今年こそは代表入りが切望される細野


【捕手】
進藤(上武大)
萩原(流経大)
印出(早稲田大)
友田(日本大)
有馬(関西大)

昨年のチームでも3年生ながら正捕手を務めた進藤(上武大)が頭1つ抜けていたが、この春はケガの影響もあり、先週やっと復帰したという状況。2番手と目されていた有馬(関西大)、3年生ながら早稲田大の4番捕手を務める印出、肩力とスピードはトップクラスの友田(日本大)、東海大相模では控えだったものの大学球界で屈指の捕手に成長した萩原(流通経済大)らにもチャンスはありそうだ。
20230312上武大 進藤
進藤のケガからの復帰具合が、正捕手争いのキーとなる


【内野手】
辻本(仙台大)
熊田(早稲田大)
廣瀬(慶応大)
上田(明治大)
宗山(明治大)
内海(法政大)
今泉(法政大)
佐々木(青学大)
柳館(国学院大)
伊藤(名城大)
坂下(近畿大)

内野手は東京六大学野勢が強力な布陣を構成する。ドラフト1位候補の上田(明治大)・廣瀬(慶応大)という左右のスラッガーに、昨年は2年生ながら大学日本大の正ショートを務めた宗山(明治大)の3人は筆頭。ただショートにおいては、熊田(早稲田大)がこの春は打撃好調で、三冠王も視野に入っている。さらに昨年も代表に名を連ねた辻本もおり、レギュラー争いは激化している。
20230514早稲田大 熊田
この春打撃好調で東京六大学の三冠王も視野に入っている熊田


【外野手】
麦谷(富士大)
福島(白鷗大)
宮崎(山梨学院大)
中島(青学大)
天井(亜細亜大)
皆川(中央大)
渡部(大商大)
村上(九州共立大)

実績十分の内野手とは対照的に、大学日本代表という意味ではニューフェイスの多い外野手。俊足揃いのメンバーの中でも、麦谷(富士大)・福島(白鷗大)のスピースター2人際立っており、合宿での50㍍のタイムも気になるところ。宮崎(山梨学院大)・皆川(中央大)・渡部(大商大)・村上(九州共立大)の打撃はツボにはまれば、すさまじいものがあり、合宿で誰がとびぬけるのかが楽しみである。
20221108白鷗大 福島
リーグ戦で20盗塁という驚異のスピードを見せている福島


個人の勝手な予想になりますが、以上になります。


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大商大高×履正社【春季大阪大会】

5/5 春季大阪大会4回戦
大商大高×履正社

試合経過

春季大阪大会は、4回戦からようやく有観客となり、大阪シティ信金スタジアムでは大商大高と、センバツにも出場した履正社という強豪同士が激突した。

履正社の先発は、センバツに続いて背番号1を背負う福田。球威のある左腕ではあるが、立ち上がりは制球に苦しみ、1番藤原・3番高岡と2人を歩かせてしまいピンチを背負う。4番安田は低めのワンバンするスライダーで三振に仕留めるも、キャッチャーが弾く間にランナーが進塁すると、5番久保の打席でも同じようにワンバンしたスライダーをキャッチャーが後逸し、藤原が生還して大商大が先制する。
20230505大商大 藤原
先制のホームを踏んだ大商大のリードオフマン藤原

2回表には、福田は1死からのセカンドゴロを只石が暴投してしまいランナーを許すと、続く打者には右打者の足元のスライダーが当たってしまい死球で1・2塁。続く9番板倉のバントを、福田は3塁へ送球するも、(タイミングはアウトだったが)これが暴投となりランナー1人が生還。さらに続く藤原のショートゴロは難しいバウンドであったものの、これをショート森澤が取れずに、2者が生還。この回履正社は3個のエラーで3失点を喫し、大商大高は2回までにノーヒットながら4得点をあげる。

早く追いつきたい履正社であるが、大商大の先発板倉の前に、4回まで1安打無得点と完全に抑えられていた。しかし5回裏、四球と福田のライト線への2ベースで1死2・3塁のチャンスを作ると、1番近澤がレフトへタイムリーを放ち、レフトのエラーもあって2人が還って2ー4。さらに森澤・西と連続四球を選んで、1死満塁と一気に逆転までみえるチャンスを作り、4番坂根を迎える。ただ板倉がここでギアを入れ直したのか、なんと4番坂根を3球三振に仕留めると、続く5番森田も三振に仕留めて、履正社の反撃を断ち切った。
20230505履正社 近澤
履正社反撃のタイムリーを放つ近澤

履正社の福田は、3回以降は持ち味の力のあるストレートと、鋭く曲がるスライダーを武器に好投。スライダーに関して言えば、序盤にはバッテリーミスや死球で得点に繋がってしまったものの、右バッターの足下にワンバンするように曲がるボールに、大商大打線のバットは空を切っており有効であった。結局福田は7回まで投げて、打たれたヒットは、5回には藤原に浴びた単打1本のみだが、4失点(自責点1)という内容であった。
20230505履正社 福田
7回まで大商大打線を1安打に抑えた福田

6・7回は再び板倉の前に沈黙していた履正社打線だが、8回には坂根のヒットと四球で作った2死1・2塁のチャンスで、7番西田が痛烈な打球で1・2塁間を抜くタイムリーヒットで1点差。ただ続く同点のチャンスでは、板倉がまたもや踏ん張り、代打太鼓地をセカンドゴロに仕留める。

履正社は8・9回と2番手の高木が力強いストレートを武器にパーフェクト投球をみせ、試合は大商大が1点リードのまま最終回を向ける。9回裏に履正社は1死から1番近澤がこの試合3本目となるヒットで出塁。2死となるも、プロ注目の3番西もセンター前ヒットを放ち、1打同点、長打が出れば逆転サヨナラというチャンスを作り4番坂根を迎える。しかし板倉はここでもピンチでの強さを発揮し、坂根を2球で追い込むと、最後は外に逃げるスライダーで空振り三振。大商大は1安打ながらも、4ー3で追いすがる履正社を下した。
20230505大商大 バッテリー
完投勝利をあげてガッツポーズの大商大バッテリー


20230505大商大×履正社
※お手数ですが、もしスコアが見づらい場合には画面を拡大してみてください


履正社としては、序盤の自滅が響いて、まさかのノーシードとなってしまった。これはこれで改善しなければいけない一方、選手個々の実力は全国でもトップクラスであり、ノーシートというのは大阪桐蔭も含めて、他の強豪チームから見ても嫌であろう。特に福田→高木の投手陣は共に力強いストレートを誇り、大商大打線を1安打に抑えた。この2人は昨秋は登板機会が少なかったが、この春にかけては台頭してきており、それにより秋は背番号1を背負っていた左腕の増田は、近畿大会で2試合連続ホームランを放った打力を生かして、この春は背番号7でレフトを守っている。途中ベンチ前でキャッチボールをするなど、投手としての登板もうかがっていたが、投手陣の厚みが増したことには変わりない。福田に関しては序盤の制球難や自らのエラーなど課題は出たものの、力のあるストレートに、右バッターの膝元に鋭く曲がるスライダーは強烈で、素材としてはドラフト候補といえる投手になった。野手組では、森澤・西・坂根・森田とこの試合で2~5番を務めた4人もドラフト候補といえる逸材であり、5人のドラフト候補を抱える強力チームであるといえる。
20230505履正社 増田
投手としても実力者ながら今大会ではレフトを守る増田

大商大は実は、2019年の春季大阪大会でも履正社を破り、そのまま大阪大会で優勝を果たしている。ちなみにこの時破った履正社は、井上(阪神)らがおり、夏に甲子園で優勝したチームだ。この時の大商大高のエースは、現在の大商大のエースで今年のドラフト候補である上田である。この試合で履正社打線を見事に抑えて完投勝利をあげたエース板倉も、大学野球を経てプロを目指したいと、早くも大商大進学を宣言しており、上田と同様のケースに期待したい。さらにさかのぼると、上田の4年前は大西(大商大高→大商大→ヤクルト)、さらにその4年前は岡田(大商大高→大商大→広島)と4年周期で、大商大高は好投手をプロに輩出している。大商大にとっては、2つの意味で吉兆ともいえる勝利であったといえる。
20230504大商大 上田
大阪商業大のエースで今年のドラフト候補の上田


Pickup Player
板倉大輔 大商大高3年 投手
~強力打線相手にここ一番での強さを発揮し完投勝利~
大商大はエース板倉が強力履正社打線にも臆せず、ここ一番での素晴らしい投球をみせ3失点完投で勝利した。

184㎝のスラっとした体格の大商大の板倉は、2年秋からチームのエースとなるも、秋は大阪桐蔭の前にコールド負け。今日の相手の履正社にも練習試合では、6回8失点でKOされ、さらに冬場には右肘を痛めてしまう。ただ今年3月の練習試合では144㌔をマークするまでに成長し、この試合でも先発のマウンドに上がった。

この試合の板倉の魅力はスピードというよりも、コントロールと変化球、そしてここ一番での強さであった。いきなり初回に先頭打者の近澤を得意のスライダーで3球三振に仕留めると、3番西・4番坂根とプロ注目の2人からも三振を奪うなど上々のスタートを切った。板倉のスライダーは曲がりが大きく、そして右バッターの外のボールゾーンにかけていいところに決まっており、他にカーブやフォークも投じていたが、変化球ではスライダーが割合としても格段に多かった。スライダーだけでなく、ストレートも低めに丁寧に投げることができており、コントロールも良かった。

4回まで履正社打線を1安打に抑えていた板倉であるが、5回にはついに捕まってしまい、近澤にタイムリーを浴びて2失点。そこから森澤・西に連続四球を与え、誰もがここで履正社打線の怖さを知り、本来の投球ができなくなったと思った。しかしここでギアを入れ替えたのか、4番坂根を2球で追い込むと、最後はアウトコースいっぱいのストレートで見逃し三振。続く森田も得意のスライダーで空振り三振に仕留めるなど、このピンチで最高の投球をみせた。6・7回は再び履正社打線を3人ずつで抑える序盤と同じ投球をみせると、8回には1点差に迫られ、最終回にも2死1・2塁のピンチを迎える。ただここでもギアを入れ替えたのか、4番坂根に対してまたもや2球で追い込むと、最後はボールゾーンに曲がる得意のスライダーで3球三振。ここ一番での投球が光り、履正社から7安打9奪三振3失点完投勝利をあげた。

板倉は現段階では大学進学(おそらく大商大)を表明している。タイプ的にも144㌔は出るとのことだが、現段階では圧倒的な投球をするというよりは、変化球・コントロールなども含めた総合力の高い投手だと思っている。ただここ一番で最高の投球ができるメンタルはプロ向きだ。上述の通り、大商大高は4年周期で好投手を輩出しており、今年の板倉もその周期にあたる。まずは夏の大阪大会で、履正社や大阪桐蔭を食うことが目標であろうが、早くも大学球界での活躍が楽しみな投手である。

20230505大商大 板倉



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関西国際大×天理大【阪神大学野球連盟】

5/1 阪神大学野球連盟 第4節1日目
関西国際大×天理大 @ほっともっとフィールド神戸

試合経過

阪神大学野球連盟の、関西国際大×天理大のゴールデンカードの第1戦。首位の天理大に対し、関西国際大は勝ち点を落とすと優勝が絶望となる。初戦なので、関西国際大は不後、天理大は藤居の両エースが先発のマウンドに上がった。

天理大は1回裏、吉田元が四球→下林のサード強襲ヒットで1・2塁のチャンスを作ると、4番近藤の初球で意表をつくダブルスチール。続く2球目を近藤がセンターに犠牲フライを放ち、鮮やかに天理大が先制する。関西国際大は2回表、連続死球から木谷が送って2・3塁のチャンスを作ると、9番杉浦のショートゴロの間に同点に追いつく。

天理大の藤居は、近江高では林(西濃運輸→楽天)の控えであったものの、天理大では昨年から先発の1番手を務めるまでに成長。長い腕をコンパクトに振り抜き、ストレートはMAX140㌔であったが、スライダー・カーブ・チェンジアップといった変化球でうまく緩急をつけられる投手だ。3回以降もランナーは出しながらも粘り強く投げ抜き、6回まで関西国際大打線を1点に抑える。
20230501天理大 藤居
天理大の先発の藤居

関西国際大は7回表、先頭の山本が内野安打で出塁して、続く山添ショートゴロで進塁して1死2塁とチャンスを作る。このピンチを天理大は藤居→長野にピッチャーを交代し、松商学園バッテリーに託したものの、関西国際大は2死1・3塁となってから、6番高山がレフトへタイムリーを放ち、勝ち越しに成功する。
20230501関西国際大 高山
勝ち越しのタイムリーを放った高山

チャンスを作ってきた関西国際大打線とは対照的に、天理大打線は4回以降は不後の前にノーヒットに抑えられてしまい、そのまま最終回を迎えてしまう。ただ9回裏、先頭の4番近藤が変化球をうまくライト前に運ぶと、続く中川のバントは自らもセーフとなるヒットで無死1・2塁。代打早川のバントは失敗に終わるも、7番牛島は詰まりながらもショートとセンターの間に落ちるヒット。判断が難しい打球であったが、2塁ランナーの中川も思い切りよくスタートし、一気にホームインして天理大が土壇場で同点に追いつく。ただ続くサヨナラのチャンスでは、不後が踏ん張って小林→代打西村を打ち取り、試合は2ー2で9回終了。10回からは無死1・2塁で継続打順スタートのタイブレークに突入する。
20230501天理大 牛島
土壇場で同点タイムリーを放つ牛島

天理大は9回からマウンドに上がっている1年生の的場が続投し、10回表の関西国際大の攻撃は代打井戸川がバントし、この回からファーストについていた野上が3塁へ送球も判定はセーフで無死満塁。6番高山はサードライナーで1死となるも、7番神内が初球を左中間へ運ぶタイムリー2ベースを放ち2者が生還。さらに代打三木のショートゴロの間にもう1点を追加し、3点差とする。
20230501関西国際大 神内
貴重な2点タイムリー2ベースを放った神内

関西国際大は不後が引き続き10回のマウンドに上がり、後攻の天理大は3点差となるとバントなどしている場合てばないので強攻策に出るものの、1番天野の打球はサードライナーとなり、2塁ランナー戻れずにゲッツー。不後が最後の打者を素早い打球反応でピッチャーゴロに仕留めて、10回2失点完投。関西国際大がタイブレークの激戦を制して、優勝への望みを繋いだ。


20230501関西国際大×天理大
※お手数ですが、もしスコアが見づらい場合には画面を拡大してみてください


関西国際大が意地をみせた試合であった。阪神大学野球連盟は天理大と関西国際大の2強というイメージがあったが、気づけばここのところはリーグ戦では、天理大が4連覇中。この試合のメンバーを見ても、天理大の方が甲子園経験者も多く、やや戦力的にも差があるようにみえた。ただこの試合に関していえば、チャンスは圧倒的に関西国際大の方が多く、エース不後も素晴らしい投球をみせており、試合を支配していた。最終回には同点においつかれて、タイブレークを経ての勝利となったものの、関西国際大が勝利したのは当然の結果といえるものであった。

敗れてしまった天理大は正直この試合では完璧にやられてしまったが、まだ悲観する必要はない。上述のように戦力でいえば天理大の方が上であるとみており、不後が投げられない第2戦、さらには10回投げ抜いた後の中1日での登板が予想される第3戦となれば、天理大にも大いに勝機がある。特に天理大の戦力で目を引いたのは、9回からマウンドに上がった1年生の的場だ。大坂電通大高では関大北陽相手に20奪三振をマークしプロからも注目された右腕は、そのまま大坂電通大には進学せずに、同リーグの強敵となる天理大に進学。1年春からリリーフとして登板を果たしており、この試合でも1点ビハインドの9回、さらにはタイブレークのマウンドを任された。最終的に敗け投手となってしまったが、これはやや不運なところもあり、186㎝の長い腕をスリークウォーター気味に振り抜いて繰り出すストレートには角度があり、スピードはMax138㌔にとどまったが、威力は十分であった。今年で藤居・真城の2枚看板が抜けても、来年以降も天理大の天下を予感される存在であった。
20230501天理大 的場
大きな期待を抱かせる天理大の1年生右腕の的場


Pickup Player
不後祐将 関西国際大4年 投手
~鉄腕がこの試合も10回完投~
関西国際大のエース不後が、この春季リーグ戦で早くも3回目となる10イニング完投で、チームに勝利をもたらせた。

2016年にはWBSC U-15ベースボールワールドカップに出場。チームメイトに宮城(オリックス)や及川(阪神)らといった左腕がいたこともあり、投手だけでなく野手としても試合に出場していた。中京へ進学すると1年秋からエース格として、同期の藤田(阪神)とのバッテリーで活躍するも、1年秋・2年秋ともに東海大会準決勝で敗退と甲子園にあと1歩のところで涙をのんだ。ただ3年夏の岐阜大会ではエースとして全試合に先発、今年のドラフト候補である赤塚(中京学院大)や1個下の元(オリックス)とのリレーで岐阜大会を制覇し甲子園に出場。甲子園でも同じく全試合で先発を務め、3回戦では遠藤(阪神)・西川(ロッテ)・山村(西武)・石田(巨人)擁する東海大相模を破り、準々決勝でも作新学院を破り、準決勝では奥川(ヤクルト)擁する星稜に敗れたものの、見事ベスト4まで進出した。

関西国際大でも1年秋から先発として勝ち星をあげており、2年秋には大勢(巨人)に次ぐ先発2番手として5勝(敗けなし)の活躍をみせ、3年春からはエース。今年も絶対的エースとして、3完投(うち2回は延長10回完投)で3勝をマークしており、前回の10回完投から中3日でも、この天理大との大一番で先発のマウンドに上がった。

序盤3回までは天理大打線にやや打ち込まれ、ピンチを背負うことも多かったものの、4回からは得意のカットボールを中心とした投球に切り替え、ストレートもスピードが上がってきて復調。4回~8回は天理大打線をノーヒット、打者15人で片づけるという快投をみせた。9回には同点に追いつかれたものの、その後のサヨナラのピンチも防ぎ、無死12塁スタートのタイブレークも無失点で切り抜けて、この春のリーグ戦3回目となる10回完投勝利をあげた。

不後はストレートはこの試合ではMax143㌔をマークし、球速差の少ないカットボールとのコンビネーションが有効で、スライダーやカーブで緩急をつけることができる。右バッターのインコースにも臆せず投げ込むことのできるコントロールとマウンド度胸もあり、スタミナやフィールディングも抜群で、投手としての全ての能力が高い選手だ。小柄な左腕であるし、大卒プロというよりは、社会人経由というタイプかもしれないが、社会人入りすれば1年目から重宝される投手であろう。

またこの試合では投手であったが、高校時代から打撃もよく、前節では先発登板しない試合に3番DHで出場してタイムリーを放つ活躍をみせた。藤田(阪神)にもらったバットで出場しているという急造打者のようだが、本当に凄いことで、二刀流としての期待もかかる万能選手である。
20230501関西国際大 不後



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桐生第一✕健大高崎【春季群馬大会】

4/29 春季群馬大会準々決勝
桐生第一✕健大高崎 @高崎城南球場

試合経過

春季群馬大会は、健大高崎・前橋育英・桐生第一の3強が準決勝までには潰し合う同じ山に入る組み合わせとなり、準々決勝では桐生第一と健大高崎が対戦。桐生第一は背番号11の中村、健大高崎は背番号10の加藤の両左腕の先発で試合が始まった。


健大高崎といえばエース小玉が看板であるが、1年秋にはエースナンバーを背負っていたのが、この試合先発の加藤。加藤は小柄な左腕で、当時は得意のカーブを使って緩急をつけるのが上手いいい投手だが、やはり全体としてスピードアップが必要と感じたのを覚えている。ただこの試合の加藤は、ストレートはMAX142㌔をマークし、序盤はストレートの割合も多く、上述のスケールアップした姿が見られた。
20230429健大高崎 加藤
Max142㌔をマークした先発の加藤

ただその反面、まだスピードアップしたボールをコントロールできていない部分があるのか、制球には課題があった。初回に先頭打者の佐々木にヒットを許すと、バントの構えをした2番倉地にはストライクが入らず四球。桐生第一は3番佐藤が送ると、4番鶴田の強烈な打球はレフトが何とかグラブに収めるものの犠牲フライとなり、桐生第一が先制。
20230429桐生第一 鶴田
先制の犠飛を放つ鶴田

加藤は2回にも3四死球で満塁のピンチを招くと、4回にも連続四球。桐生第一は初回と同じように8番星野が送って2・3塁とすると、9番中村のショートゴロで3塁ランナー石塚が好スタートを切ってホームインし、2点目をあげる。

桐生第一の先発の中村は、やや変則気味のフォームから繰り出すストレートはMAX131㌔とスピードはそれほどないが、カーブが84〜100㌔ほどと遅く、これでうまく緩急をつけており、その他に67㌔を計測したスローボールも投じていた。この投球で健大高崎をなんと1巡目パーフェクトに抑え、5回まで2安打無失点の好投。今泉監督の起用も的中し、試合の前半は完全に桐生第一ペースの試合となった。
20230429桐生第一 中村
5回まで健大高崎打線を無得点に抑えた中村

ただグランド整備明けの6回からは流れが変わると言われているが、この試合はそれをまさ体言するかのような形となった。健大高崎は6回裏、1番半田が三遊間を破ると、2番狩野も送らずにセンター前ヒットで無死1・3塁のチャンス。3番森田も三遊間を破り、健大高崎が3連打で初得点。桐生第一はエースのドミンゴスを投入するも、健大高崎は4番箱山が送ると、6番増渕の犠牲フライで同点とする。
20230429健大高崎 森田
タイムリーを放つ森田

さらに團之原が四球を選んで満塁となったところで、青柳監督は2番手として好投していた多田のところに、代打佐藤を送る。元は4番を打っていたものの、この試合では背番号15となっていた強打者は、フルカウントからのスライダーを捉え、見事三遊間を破る2点タイムリーとして、健大高崎がこの回で4ー2と試合を一気に引っくり返す。
20230429健大高崎 佐藤
タイムリーを放つ代打佐藤

健大高崎は代打を送った関係で、7回からはエース小玉が登板。小玉は登板した7回こそ2四球を与えピンチを招くも、持ち前のストレートを中心とした投球で、アウトは全て三振でピンチを凌ぐと、8回にはなんと150㌔をマークし、石塚から三振を奪う。8・9回をパーフェクト投球で小玉が締めて、健大高崎が4ー2で勝利。桐生第一は気付けば初回の先頭打者の佐々木のヒットのみで、それ以降は健大高崎投手陣の前にノーヒットに抑えられてしまった。


20230429桐生第一✕健大高崎
※お手数ですが、もしスコアが見づらい場合には画面を拡大してみてください


桐生第一としては本当に5回までは今泉監督の思い描いた通りの展開だったのではないだろうか?先発の変則左腕の中村に、強打の健大高崎打線は合わずに無得点であった。ただ中村で完封とは考えていなかっただろうし、エースのドミンゴスに繋ぐことも予想通りではあったのだろうが、そこで食い止めることができなかった。ドミンゴスは185㎝の長身を誇り、長い腕を生かして投げ下ろすようにボールを投げ込むが、この試合ではストレートは134㌔止まりであり、変化球に頼った投球となってしまった。健大高崎のように登板した3投手全てが140㌔越えとまではいかなくても、1人力のある柱となる投手がいることでディフェンス面は安定してくるし、その1人にドミンゴスがなって欲しいところだ。
20230429桐生第一 ドミンゴス
夏に向けたさらなるパワーアップに期待したいドミンゴス

健大高崎は上述の通りに、加藤→多田→小玉と登板した3投手全員が140㌔越えで、小玉に関しては150㌔をマーク。打者においても、ホームランこそなかったものの、1番半田がセンターの深いところまで打球を飛ばしたり、4番箱山がレフトの防護ネット直撃のファールを飛ばしたりと、いとも簡単にボールを飛ばしている印象があった。ただ彼らの体格をみると、加藤・半田に加え、パワフルなスイングで5番を務めた堀江は身長160㎝台であり、この試合のスタメンでも180㎝以上は團之原のみである。もちろん体格は必要なのだが、そうでなくても高い出力を発揮できる練習法は気になるところである。またどの選手も高い出力を誇ることで、この春は佐藤志龍がベンチスタートになっていたりと、選手層の厚さを誇っていると思われる。そして佐藤志龍の弟であり、中学時代はNo1左腕といわれた佐藤龍月など、有望な1年生も多く入っており、そのレギュラー争いはさらに楽しみである。


Pickup Player
小玉湧斗 健大高崎3年 投手
~ついに150㌔右腕の仲間入りしたエース~
健大高崎のエース小玉は7回から登板し、ストレートはMax150㌔をマークして、3回を無失点に抑えた。

東北楽天Jrに選ばれるなど、秋田で活躍していた小玉は健大高崎に入学すると、1年秋から投手陣の一角として活躍。回転のいい140㌔を超えるストレートとコントロールの良さを武器として、2年夏には決勝の樹徳戦で7回1失点の好リリーフをみせた。2年秋からはエースとなると、群馬大会では前橋育英や樹徳から完投勝利をあげてチームを優勝に導き、関東大会でも青藍泰斗と横浜から完投勝利をあげ、チームにセンバツ切符をもたらせた。2年秋の熊野ベースボールフェスタの近大新宮戦では11連続奪三振を記録。ただ3年春のセンバツでは、3連続押し出しを与えるなど本来の力を発揮できずに、準優勝した報徳学園に初戦で完敗してしまった。

それでも140㌔越えの投手を含めて多くの投手を擁する健大高崎においても、小玉のエースとしての存在は別格。なのでこの春季大会は基本他の投手が先発を務めて、小玉はベンチで待機という形になっていた。この試合でも2番手の多田は好投していたが、代打を出した関係で、小玉が7回からマウンドに上がった。

登板した7回はややコントロールにバラツキが見られ、2四球と与えたものの、ストレート中心の投球でアウト3個は全て三振で奪った。この日の小玉は本当に余裕の見える投球で、ストレートはアベレージ140㌔ちょっとであったが、まだ本気ではないのかなという印象。ただ8回に追い込んでから石塚に投じた高めのボールは、なんと150㌔を計測。このボールで4者連続となる三振を奪った。最終回にも、最後の打者を追い込んでから、明らかに力を入れて投げたボールは148㌔をマーク。結局3イニングをなげて、ノーヒット6奪三振無失点という圧巻の内容であった。

これで150㌔右腕の仲間入りをした小玉だが、本来はストレートの回転の良さが持ち味で、コントロール・変化球も含めてバランスのいい投手だと思う。どちらかというと即プロというよりは、大学で活躍するタイプの投手だ。それでも150という数値、桐生第一に対して余裕を見せながらも圧倒した投球はスカウトとしては、放っておけるものでないので、夏の活躍次第ではドラフト上位候補となるかもしれない。

20230429健大高崎 小玉


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