6/11 中京学院大×奈良学園大【全日本大学野球選手権】
大会初日に神宮に足を運んだ最大の理由は吉川が見たかったからである。ところが、桐蔭横浜大・亜細亜大と首都圏の強豪を撃破して、なんと準決勝までやってきました。対するは履正社コンビを筆頭に、近畿学生野球連盟を夢想中の奈良学園大学。どちらが勝っても初の決勝進出となる一戦です。
スタメン
中京学院大
奈良学園大
試合経過
《1回表》中京学院は2番南が四球で出塁→盗塁。続くプロ注目の吉川は3B2Sからのストレートを右中間に運び、中京学院が先制。2死後、主将の5番山崎にもタイムリーが飛び出します。(中2-0奈)
《1回裏》奈良学園大がすぐさま反撃に出ます。先頭の西田がセンター前ヒットで出塁すると、2番米満の初球にエンドラン。セカンドベースに入ろうとするショートに対し、三遊間にゴロを放って内野安打。宮本のセカンドゴロで2・3塁となると、4番高橋のセカンドゴロの間にまず1点。続く5番村上がレフトにタイムリーを放ち、奈良学園大があっという間に同点に追いつきます。(中2-2奈)
《4回裏》四球で出塁した高橋がワイルドピッチで2進。村上が2打席連続となるタイムリーを左中間に放ち、奈良学園大が逆転に成功します。(中2-3奈)
《6回裏》先頭の宮本が四球で出塁、高橋が三振で1死1塁となったところで中京学院大は熊岡→市川(4年:中京)にスイッチします。しかしこの市川が村上・中西に連打を浴び、宮本がホームイン。2死2・3塁となったところで、市川→エースの栁川にスイッチ。栁川が松木を三振に仕留め、この回を最少失点で凌ぎます。(中2-4奈)
《9回表》2回以降鈴木に完璧に抑えられていた中京学院打線が奮起します。1死から代打の大向(2年:花巻東)、坂之下、戸田の3連打で満塁のチャンス。続く南はサードゴロも、何とか併殺を逃れて、1点差2死1・3塁で吉川を迎えます。しかし奈良学園大は吉川を敬遠。2死満塁となったところで、4番石坂にセンター前の2点タイムリーを浴び、逆転を許します。(中5-4奈)
《9回裏》簡単に2死となるも、そこから米満がセンター前ヒットで出塁。さらに続く宮本の初球がワイルドピッチとなり、2死2塁とします。ここで中京学院バッテリーは宮本を敬遠し、2死1・2塁で4番高橋となります。しかし高橋はセカンドフライに打ち取られ万事休す。中京学院大が5-4で奈良学園大を破り、決勝進出です。

4回に勝ち越しタイムいりーを放った奈良学園大:村上

3回1/3を無失点リリーフで勝利を呼び込んだ中京学院大:栁川

9回に逆転タイムリーを放った中京学院大:石坂
スコア
中京学院大

奈良学園大

Topic
明暗を分けた3番打者の敬遠
9回表、中京学院大は1点差に迫り、なおも2死1・3塁という場面で打席には吉川。球場全体が最高のボルテージを迎えた。吉川が中京学院打線で1番怖いバッターであるということは自明だが、敬遠してしまえば、逆転のランナーが2塁へいってしまう場面。そんなリスクを冒してでも、球場全体の冷たい視線にさらされながらも、奈良学園大のバッテリーは4球連続でアウトコースのボール球を投じた。
結果的に続く4番の石坂は2球目のカーブをセンター前に弾き返す逆転タイムリー。奈良学園大の敬遠は見事裏目に出てしまった。
しかしその裏、奈良学園大も2死2塁と同点のチャンスを作り出す。バッターは3番の宮本。前の試合ではサヨナラ満塁ホームランを放った、奈良学園大No1の打者に対し、中京学院はアウトコースにボールを投じ、敬遠という選択をとった。こちらも宮本を出すことで逆転のランナーを出してしまうという、とてもリスキーな選択であった。
結果は4番高橋をセカンドフライに打ち取り、中京学院大が勝利☆
両チームのリスキーな3番敬遠という選択が、見事に明暗を分けた結果であった。
エースは温存できたの?
決勝を見据えてか、この日の中京学院大の先発はエースの栁川ではなく、同じく4年生左腕の熊岡。しかし2番手市川がリードを2点に広げられ、なおも2・3塁のピンチの6回に栁川がマウンドへ向かった。松木を三振に斬って、ピンチをしのぐと7回以降もそのまま続投した。
この日の栁川は、まさに気合のこもったピッチングであった。淡々と投げる先発のときとは、違って球に力があるようで、ストレートは140㌔前後のものが多い(先発のときは135前後が多い)。三振も普段は多いタイプではないが、この日は3回1/3で6個。ボール球になるスライダーでとったものが2つあるが、残りの4個はストレートで空振りをとったものである。9回の逆転劇も、このエースの気合の入ったピッチングが呼んだものといっても過言でないだろう。
結局栁川がこの日投じたのは61球であるが、かなり力は入っていたと思う。果たして明日の決勝に向けて温存になったのか、ならなかったのか…。微妙なところであるが、いずれにせよ明日の先発が栁川であることは間違いないだろう。吉川ばかりに注目がいくが、中京学院大の決勝進出の最大の功労者である栁川のピッチングに明日も注目です。
主将のまさに力投
中京学院大が3人のピッチャーをつぎ込んだ一方、奈良学園大はエースで主将の鈴木が完投した。
鈴木の特徴として面白いのが、コントロールは決して悪くないのに、上に抜けた明らかなボールが結構見られるというところだ。一言で表すならば、「ストライクボールがはっきりしていることだ」という状態だ。こう言うとピッチャーにとってはよくないことに聞こえるが、鈴木の場合は投げそこないの変化球などがきっちりとボールになっていて、甘く入ることがない。きっちり投げられたボールでいいところでストライクはとれ、投げそこないはボールとなる。これは鈴木の長所であると思った。
この日の鈴木は、初回に2点こそとられえたものの徐々に調子を上げていき、3~6回は被安打0、2~8回を無失点。140㌔を越えるストレートに、チェンジアップ、縦に大きく曲がるカーブなどを武器に好投を続けていた。9回になっても球威は衰えることなく、攻めのピッチングをしていた。戸田・石坂のヒットはともに詰まっていたけど、きれいに二遊間に飛んでしまったというものであったし、南のサードゴロもあそこまで詰まっていなければ、併殺で終わっていたかもしれない。石坂に逆転打を浴びる前の球は、この日最速の145㌔をマークしていたし、スタミナが切れることなく、最後までにまさに力投をしていた。
あえていえば、吉川に対しても2打席目では全球ストレートで三振を奪うなど、いいピッチングができたいので、9回の場面でも勝負して欲しかったな…というところです(まぁベンチの指示だからしょうがないけど)。そんな力投もむなしく敗れてしまったのが残念だが、ぜひこのままのピッチングを貫いて、秋には神宮に戻ってきてほしいものだ。

敗れはしたものの、見事9回を完投した奈良学園大のエース鈴木
Pickup Player
吉川尚輝 中京学院大4年 ショート
スターの宿命
もともとプロ注目のショートして有名な吉川であったが、この大会で全国に名を轟かせることとなった。リーグ戦で打率5割を越え、シュアなバッティングを見せつつも長打も打てる。走っては50㍍6秒を切り、リーグで3期連続盗塁王。守備範囲は広く、堅実・強肩も兼ねそろえていて文句なし。走攻守のどれをとっても一級品で華麗なプレーができ、まさにスターである。
吉川の大会になりつつある今回の大会であったが、さすが今日はもう終わったか…と思った。最終回の9回、吉川にまわるには3人出る必要があったが、2回以降それまで完璧に抑えられていた中京学院大打線にそれは望みづらい状態であった。しかし相手の鈴木が乱れたわけでもないのに、飛び出す連打。球場では徐々に吉川の打席への期待感が高まっていった。
そして仲間がなんとか繋いで、1点差で負けている2死1・3塁という最も面白い場面で吉川を迎えた。球場のボルテージも最高潮になる。しかし結果はご覧のように敬遠…。9回に打席が回ってくるのがスターの宿命であれば、そこで敬遠されてしまうのもスターの宿命なのである。
とはいえ、石坂の逆転タイムリーで何とか生き残った吉川。明日はいよいよ決勝戦である。優勝すれば、17打数7安打と打率4割越えという成績から見てもMVPの可能性もあり(栁川も有力だが)、まさに吉川の大会となることも現実味を帯びてきた。

1回に先制タイムリーをはなつ吉川
余談
この日3安打2打点と大活躍だった奈良学園大の村上です。サングラスという反則な部分はありますが、センターを守る姿ですが、どことなくあの方に似ている気がします。
そう新庄剛!!
吉川だけでなく、こちらもスター要素は十分にありますよ。

センターをまもる奈良学園大の村上
スタメン
中京学院大
CF | 戸田 | ④ | 大垣日大 | 6 |
2B | 南 | ③ | 中京 | 4 |
SS | 吉川 | ④ | 中京 | 7 |
3B | 石坂 | ③ | 中京 | 8 |
C | 山崎 | ④ | 昭和第一 | 10 |
DH | 楠 | ④ | 塩山 | 5 |
1B | 内藤 | ② | 大垣日大 | 1 |
RF | 影山 | ③ | 昭和第一 | 29 |
LF | 坂之下 | ② | 鵬翔 | 14 |
P | 熊岡 | ④ | 松川 | 21 |
奈良学園大
LF | 西田 | ③ | 報徳学園 | 24 |
1B | 米満 | ② | 敦賀気比 | 9 |
SS | 宮本 | ③ | 履正社 | 8 |
3B | 高橋 | ③ | 明徳義塾 | 6 |
CF | 村上 | ③ | 北照 | 3 |
2B | 中西 | ③ | 箕島 | 7 |
DH | 中井 | ② | 大商大堺 | 13 |
C | 松木 | ③ | 常葉菊川 | 10 |
RF | 菅田 | ① | 京都共栄 | 44 |
P | 鈴木 | ④ | 履正社 | 1 |
試合経過
《1回表》中京学院は2番南が四球で出塁→盗塁。続くプロ注目の吉川は3B2Sからのストレートを右中間に運び、中京学院が先制。2死後、主将の5番山崎にもタイムリーが飛び出します。(中2-0奈)
《1回裏》奈良学園大がすぐさま反撃に出ます。先頭の西田がセンター前ヒットで出塁すると、2番米満の初球にエンドラン。セカンドベースに入ろうとするショートに対し、三遊間にゴロを放って内野安打。宮本のセカンドゴロで2・3塁となると、4番高橋のセカンドゴロの間にまず1点。続く5番村上がレフトにタイムリーを放ち、奈良学園大があっという間に同点に追いつきます。(中2-2奈)
《4回裏》四球で出塁した高橋がワイルドピッチで2進。村上が2打席連続となるタイムリーを左中間に放ち、奈良学園大が逆転に成功します。(中2-3奈)
《6回裏》先頭の宮本が四球で出塁、高橋が三振で1死1塁となったところで中京学院大は熊岡→市川(4年:中京)にスイッチします。しかしこの市川が村上・中西に連打を浴び、宮本がホームイン。2死2・3塁となったところで、市川→エースの栁川にスイッチ。栁川が松木を三振に仕留め、この回を最少失点で凌ぎます。(中2-4奈)
《9回表》2回以降鈴木に完璧に抑えられていた中京学院打線が奮起します。1死から代打の大向(2年:花巻東)、坂之下、戸田の3連打で満塁のチャンス。続く南はサードゴロも、何とか併殺を逃れて、1点差2死1・3塁で吉川を迎えます。しかし奈良学園大は吉川を敬遠。2死満塁となったところで、4番石坂にセンター前の2点タイムリーを浴び、逆転を許します。(中5-4奈)
《9回裏》簡単に2死となるも、そこから米満がセンター前ヒットで出塁。さらに続く宮本の初球がワイルドピッチとなり、2死2塁とします。ここで中京学院バッテリーは宮本を敬遠し、2死1・2塁で4番高橋となります。しかし高橋はセカンドフライに打ち取られ万事休す。中京学院大が5-4で奈良学園大を破り、決勝進出です。

4回に勝ち越しタイムいりーを放った奈良学園大:村上

3回1/3を無失点リリーフで勝利を呼び込んだ中京学院大:栁川

9回に逆転タイムリーを放った中京学院大:石坂
スコア
中京学院大

奈良学園大

Topic
明暗を分けた3番打者の敬遠
9回表、中京学院大は1点差に迫り、なおも2死1・3塁という場面で打席には吉川。球場全体が最高のボルテージを迎えた。吉川が中京学院打線で1番怖いバッターであるということは自明だが、敬遠してしまえば、逆転のランナーが2塁へいってしまう場面。そんなリスクを冒してでも、球場全体の冷たい視線にさらされながらも、奈良学園大のバッテリーは4球連続でアウトコースのボール球を投じた。
結果的に続く4番の石坂は2球目のカーブをセンター前に弾き返す逆転タイムリー。奈良学園大の敬遠は見事裏目に出てしまった。
しかしその裏、奈良学園大も2死2塁と同点のチャンスを作り出す。バッターは3番の宮本。前の試合ではサヨナラ満塁ホームランを放った、奈良学園大No1の打者に対し、中京学院はアウトコースにボールを投じ、敬遠という選択をとった。こちらも宮本を出すことで逆転のランナーを出してしまうという、とてもリスキーな選択であった。
結果は4番高橋をセカンドフライに打ち取り、中京学院大が勝利☆
両チームのリスキーな3番敬遠という選択が、見事に明暗を分けた結果であった。
エースは温存できたの?
決勝を見据えてか、この日の中京学院大の先発はエースの栁川ではなく、同じく4年生左腕の熊岡。しかし2番手市川がリードを2点に広げられ、なおも2・3塁のピンチの6回に栁川がマウンドへ向かった。松木を三振に斬って、ピンチをしのぐと7回以降もそのまま続投した。
この日の栁川は、まさに気合のこもったピッチングであった。淡々と投げる先発のときとは、違って球に力があるようで、ストレートは140㌔前後のものが多い(先発のときは135前後が多い)。三振も普段は多いタイプではないが、この日は3回1/3で6個。ボール球になるスライダーでとったものが2つあるが、残りの4個はストレートで空振りをとったものである。9回の逆転劇も、このエースの気合の入ったピッチングが呼んだものといっても過言でないだろう。
結局栁川がこの日投じたのは61球であるが、かなり力は入っていたと思う。果たして明日の決勝に向けて温存になったのか、ならなかったのか…。微妙なところであるが、いずれにせよ明日の先発が栁川であることは間違いないだろう。吉川ばかりに注目がいくが、中京学院大の決勝進出の最大の功労者である栁川のピッチングに明日も注目です。
主将のまさに力投
中京学院大が3人のピッチャーをつぎ込んだ一方、奈良学園大はエースで主将の鈴木が完投した。
鈴木の特徴として面白いのが、コントロールは決して悪くないのに、上に抜けた明らかなボールが結構見られるというところだ。一言で表すならば、「ストライクボールがはっきりしていることだ」という状態だ。こう言うとピッチャーにとってはよくないことに聞こえるが、鈴木の場合は投げそこないの変化球などがきっちりとボールになっていて、甘く入ることがない。きっちり投げられたボールでいいところでストライクはとれ、投げそこないはボールとなる。これは鈴木の長所であると思った。
この日の鈴木は、初回に2点こそとられえたものの徐々に調子を上げていき、3~6回は被安打0、2~8回を無失点。140㌔を越えるストレートに、チェンジアップ、縦に大きく曲がるカーブなどを武器に好投を続けていた。9回になっても球威は衰えることなく、攻めのピッチングをしていた。戸田・石坂のヒットはともに詰まっていたけど、きれいに二遊間に飛んでしまったというものであったし、南のサードゴロもあそこまで詰まっていなければ、併殺で終わっていたかもしれない。石坂に逆転打を浴びる前の球は、この日最速の145㌔をマークしていたし、スタミナが切れることなく、最後までにまさに力投をしていた。
あえていえば、吉川に対しても2打席目では全球ストレートで三振を奪うなど、いいピッチングができたいので、9回の場面でも勝負して欲しかったな…というところです(まぁベンチの指示だからしょうがないけど)。そんな力投もむなしく敗れてしまったのが残念だが、ぜひこのままのピッチングを貫いて、秋には神宮に戻ってきてほしいものだ。

敗れはしたものの、見事9回を完投した奈良学園大のエース鈴木
Pickup Player
吉川尚輝 中京学院大4年 ショート
スターの宿命
もともとプロ注目のショートして有名な吉川であったが、この大会で全国に名を轟かせることとなった。リーグ戦で打率5割を越え、シュアなバッティングを見せつつも長打も打てる。走っては50㍍6秒を切り、リーグで3期連続盗塁王。守備範囲は広く、堅実・強肩も兼ねそろえていて文句なし。走攻守のどれをとっても一級品で華麗なプレーができ、まさにスターである。
吉川の大会になりつつある今回の大会であったが、さすが今日はもう終わったか…と思った。最終回の9回、吉川にまわるには3人出る必要があったが、2回以降それまで完璧に抑えられていた中京学院大打線にそれは望みづらい状態であった。しかし相手の鈴木が乱れたわけでもないのに、飛び出す連打。球場では徐々に吉川の打席への期待感が高まっていった。
そして仲間がなんとか繋いで、1点差で負けている2死1・3塁という最も面白い場面で吉川を迎えた。球場のボルテージも最高潮になる。しかし結果はご覧のように敬遠…。9回に打席が回ってくるのがスターの宿命であれば、そこで敬遠されてしまうのもスターの宿命なのである。
とはいえ、石坂の逆転タイムリーで何とか生き残った吉川。明日はいよいよ決勝戦である。優勝すれば、17打数7安打と打率4割越えという成績から見てもMVPの可能性もあり(栁川も有力だが)、まさに吉川の大会となることも現実味を帯びてきた。

1回に先制タイムリーをはなつ吉川
余談
この日3安打2打点と大活躍だった奈良学園大の村上です。サングラスという反則な部分はありますが、センターを守る姿ですが、どことなくあの方に似ている気がします。
そう新庄剛!!
吉川だけでなく、こちらもスター要素は十分にありますよ。

センターをまもる奈良学園大の村上
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